幼児教育の質の向上(1)
園長ブログ |
平成27年度から始まった子ども子育て新制度では「幼児教育の質の向上」という言葉が使われています。質が向上するのは嬉しいことですから、そのための方策をどんどん実施していただきたいです。
従来から幼稚園は、「質の向上」なくしては存在できませんでした。なぜなら保護者が各園の「質」を見極めて入園していたからです。幼稚園の先生たちは自主的に教育の質を上げようと努力し、子どもたちと共に「質の向上」を喜び、自己研鑽、切磋琢磨してきました。そして先生方の質は上がり、本当に質の高い保育を実現していると思います。
29年8月、「人生の始まりを豊かに」という研修があり、日本の乳幼児 の発達・保育研究の今後に向け てのお話を聞きながら、これからの日本の保育の質の向上に大きな期待感を持ちました。
OECD教育局教育訓練政策課シニア政策アナリスト という長い肩書きの田熊美保さんのお話は、Starting strong Ⅴ レポート2017 という膨大な資料に基づく貴重で、興味深い内容でした。例えば、各国では保育の領域に政策的な関心を寄せていて、人間として極めて重要な発達領域・・情緒のコントロール、社会的スキル、言語や数における脳の感受性・・のピークは人生の最初の三年間にあるので、この時期に教育的な介入を行う( つまり、国費を使う) ことは、他のどの時期よりも投資効果があるということ、 多くのOECD諸国では、幼児教育に対する十分な公的投資がなされているし、保護者の負担への公的な支援を行う国が増えているということ( でも日本は最も少ない投資国?!?! ありゃりゃ?)
また、優れた幼児教育も、小学校教育で質が保たれない限り、その効果は失われてしまいうること、幼児教育で培った質を基にして、初等教育は出発すべき、つまり、「学校への準備ができた子どもではなく、子どもを迎える準備ができた学校にすることに焦点をあてる」
幼児教育への政策的投資(予算) がどのくらい重要視され、その効果はどうかと長年に渡って資料を蓄積し、分析している成果が、優れた幼児教育の重要性を証明してくれています。このような幅広い研究がこれからの保育を支えてくれるようになるのは、素晴らしい進歩ですね〜
今、待機児解消のために保育園がものすごい勢いで増えています。施設が増えると保育士不足が叫ばれ、保育士を増やそうと、保育士の給与を引き上げる政策が露骨に行われています。もちろん給与水準を引き上げることは大事ですが、質はさておき数だけ確保しようというのでは困ります。(今の子育て支援の対象は、働くお母さんの家庭に絞られる傾向が強いですしね〜・・)
幼稚園教育は満3歳からと決められていますが、今では幼稚園でも、預かり保育や未就園児保育などの子育て支援をしています。特に3歳未満の幼児教育については、実践しながら質を上げていることが多く、これからは2歳児保育、1歳児保育も幼児教育として考えられる時代になるでしょう。(保育と幼児教育は、同義語と言っていいと思いますが、わざわざ幼児教育という言葉を使う訳は、養護と教育を区別して、質を重視する視点と、0から2歳、3歳から5歳を区別する視点があるように思います。しかし、乳幼児期は未分化ですから、大きな意味では『保育』が一番わかりやすくていい言葉だと思います)
「質を向上」させるポイントは、環境を整えることはもちろんですが、先生の質を上げることが一番大事です。いい保育を目指して努力すること、自ら研修に臨もうとすること、保育士同士で日々の反省を話し合えること、いいと思う保育の実践を園長が許可してくれること、そのようなことがあって、「質は向上」するのです。